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木村友紀「無題」/IZU PHOTO MUSEUM

 木村友紀による美術館での初めての個展。とても充実していて面白かった。IZU PHOTO MUSEUMは写真美術館であるのだが、木村友紀は現代美術畑の人なので、写真というものに対する捉え方が写真家とは異なっているように思える。いわゆる写真展とは違って今回の展示では壁にプリントを掛けているものはほとんどなく、写真が展示室に置かれたテーブルの天板と化していたりイスの上に置かれていたりする。以前観た展示では写真のパネルが壁に無造作にも見える形で立て掛けられていることもあったことからも分かるように、木村友紀の展示では写真は空中に漠然と浮いている物質性を欠いたイメージとして存在するのではなく、写真のモノとしての側面が強調される。そして木村自身もインタビューで述べているように、写真に対して植物や石などのモノが直接接触していることによっても写真の物質性はあらわにされている。
 
 その物質性とも関わることだが、木村友紀の作品で写真は、誰が撮影したのか、被写体は誰なのか、いつどこで撮影されたのか、何のために写されたのか、どういう意味合いを持つイメージなのか、ということはほとんど意味を持たなくなる。すべての写真は「事後性(posteriority)」において、あくまでも現在の視点から木村によって価値や意味を見出されたものとして存在し、フリーマーケット等で購入したいわゆるファウンド・フォトも、木村自身が撮影した写真もまた同価値である。そして写真と写真、写真とモノは、撮影されたときには全く想定されていなかった仕方で結び付けられ、互いに呼応しあう。詳述しないが、それぞれの関係性はとても複雑に絡み合っていて、例えば写真の中の植物と本物の植物がリテラルに密着し、写真イメージの中のテーブルの上にあたかもあるようにポラロイド写真が置かれ、写真のなかで並んでいる車の色とこれまた隣り合った写真内の色とが響き合う。

 そしておそらく今回の展示で初めて試みたことだろうが、木村はテーブルの天板として写真を用いている。このことに関して木村は美術手帖のインタビューでこのように述べている。

水平に置かれたイメージは遠くから見渡すことができません。それにより一つの空間のなかに独立した小さい空間を点在させ、それらが互いに干渉し合わない。意味を結ばない一つの整然とした部屋を構成することができたのです。


通常の写真展のように壁に掛けられることなく、テーブルの天板として写真が水平に置かれることによってそのイメージは遠くから見渡すことができず、しっかり見るためには観者が物理的に近くへ移動して上から覗き込まなければならない。そうしているときはそのテーブル上のイメージしか見ることはできないし、他のテーブルの天板の写真を見るためにはそこまで再び移動して覗き込まなければならない。その二つのイメージを同時に見ることは物理的に不可能である。そして壁に掛けられた写真もまた植物によって覆い隠されるように置かれているので、イメージをよく見るためには近寄って覗き込むことが必要だ。つまり、展示室のどこかからすべてのイメージを見渡すことはできなくて、観者は室内を移動しながら一つ一つのイメージを見ていかなければならない。そのときどのイメージをどういう順番で見るかという動線はもちろん決められていないので、それぞれの観者が違った順序で見ていくことができるし、ひとりの観者であってもその度ごとに様々なやり方で繰り返し見ることができる。したがって、写真と写真、写真とモノを結びつけていくといっても、決してそれは一方向ではないし、決められた順序で進んでいく物語的なものでもない。物語性に解消してしまうことなく、様々な形で様々な関係性を見つけていくこと。観者は展示室の空間のなかを移動しながら積極的にそうすることをまさに要請されているとも言えるだろう。

 さらに、テーブルだけでなくイスもまたテーブルとともに展示室にいくつか置かれていて、そのなかのひとつには写真が置かれている。いわばイスは作品の支持体といってもよい存在でもあるのだが、それと全く同じようなイスがひとつの写真のなかにも写っていて、イメージとそのイメージが置かれている支持体とが不意に反転し目まいのような感覚を覚えた。

 まあとりあえずこんな感じでしょうか。面白い展覧会だったので期せず長くなってしまいました。今回は特別ですw 毎回こうだとすぐブログ挫折してしまいますから。Twitterの方にも書きましたが、木村友紀は日本の現代美術において最も注目すべき作家の一人だと思います。展覧会はすでに終了しています。
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SPEAKING ABOUT ART  木村友紀「無題」/IZU PHOTO MUSEUM

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