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「あざみ野コンテンポラリーvol.1 イメージの手ざわり展」

 横浜市民ギャラリーあざみ野で2月20日まで開かれていた「あざみ野コンテンポラリーvol.1 イメージの手ざわり展」に先日行ってきました。出品作家は、志村信裕、plaplax、田村友一郎、松本力、川戸由紀、横溝静(敬称略)。美術館ではないこのような施設で現代美術の良質な展覧会が開かれていることに驚きました。場所柄子どもでも楽しめる作品が多いことは事実ですが、それだけに留まらないものがほとんどでした。さらに、作品制作に関わり作品の一部?にまでなったアートサポーターの方々のご努力も特筆すべきものがあったと思います。以下、印象に残った作品を挙げつつ、少し僕のコメントも添えたいと思います。

志村信裕「モザイク mosaic」

 志村信裕は主に映像を用いた作品を制作するアーティストだが、まっさらな白いスクリーンに映像を投射するのではなく、他の出品作「パール」では建物入り口の壁を、あいちトリエンナーレ出品作では商店街の屋根をスクリーンとして利用しているように、作品の展示される場所に応じた様々な平面(平面以外も)をスクリーンに見立てて使用する。この「モザイク」という作品ではいわゆる「銀幕」にヒントを得て、ローラーを使ってあざみ野の町にある色々なタイルの形を銀紙にフロッタージュし、その銀紙を展示室の壁にいくつも貼ってスクリーンとして用いたもの。そこにはこれまたあざみ野の風景や物の映像が投射される。例えばふつう映画では映像が投射されるスクリーンの存在が観客によって意識されることはないし、むしろ積極的に忘却されなければならないのだが、この作品ではスクリーンがタイルの形を浮かび上がらせた銀紙として自分の存在を強く主張し、常にスクリーン自体が視界に入ってきて観客は映像だけを見ることができない。そしてそのような銀紙を用いているため投影されるイメージも不分明にしか現れず抽象的なイメージに還元される。しかし、その抽象的なイメージは抽象的なまま留まらず、スクリーンの具体的な表面へと常に送り返されて美しい抽象性と触覚的な具体性とのあいだで揺れ動く。まさに展覧会のタイトル通り「イメージの手ざわり」もしくはスクリーンの手ざわりを眼で感じることのできる作品であった。

田村友一郎「TAIL LIGHT」

 つい最近「NIGHTLESS」で文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した田村友一郎の作品。「NIGHTLESS」同様GoggleStreetViewの映像を作家がつなげたものを用いているのだが、今回はスクリーンの前にタクシー(本物の車)を置き、アートサポーターの方がタクシードライバーとなってタクシーに乗り込んだ観客と話をしたりしなかったりするようになっている。メディア芸術祭で「NIGHTLESS」を観たときにも思ったのだが、言葉によって映像もしくは映像への印象を変容させることに興味を持った作家なんだろうなと感じた。GoogleStreetView自体は「非人称的」ともいえる何ということもない映像なので、それだけを見ていても何も面白いことはない。しかし、そこに言葉が加わることによって観客の側が映像に対して持つ印象が一変してしまう。「NIGHTLESS」ではただのGoogleStreetViewのイメージなのに犯罪現場を見てしまったような印象を与えるし、この「TIAL LIGHT」ではドライバーとどのような会話をするかによってイメージの印象が変わるだろう。そもそも観客はドライバーとの会話の方が気になって映像を見ることに集中することができない。この作品は映像作品をただ受動的に観るというのではなく、観客も作品の内部に入りその一部となって作品を「体験」するというものだと思う。

松本力 6面映像インスタレーション

 密接に関係するが異なる六つのアニメーション作品を並べて壁に大きく投影した作品。おそらくどれも同じシリーズに所属する作品で、異なる作品でありながら時折同じようなイメージが呼応するかのように時間差を伴って反復されるのがとても面白い。別々の六つの作品でありながらバラバラ感はなく一つのインスタレーションとして成立している。それぞれの作品も魅力的で、特に最近の作品では具象的なイメージよりも抽象的なイメージが主になっていて抽象アニメーションに近くなっている。実はこの作品を観る前に、今開かれている恵比寿映像祭で松本力の作品を初めて観たのだが、とても素晴らしい作品で強い印象を受けた。「終わりを照らすものⅡ」というアニメーションが映写されていて、同時にその原画もインスタレーション的に展示されていたのだが、その原画もそれ単独で見ても非常に素晴らしいものであった。恵比寿の展示、ご覧になっていない方は是非。

川戸由紀 「無題(新宿)」「無題(渋谷)」

 今回「イメージの手ざわり展」で一番衝撃をうけたのは川戸由紀の作品であった。川戸は自閉症という障碍をもった作家だが、自閉症が作品に与える影響など素人には分からないし詮索すべきことでもないので、「アウトサイダーアート」云々は度外視して単純に作品だけを観た印象を述べたい。川戸はいわゆるお天気カメラの映像に異様な執着を見せてそれを録画しては繰り返し見ていたそうだ。今回展示された作品は、お天気カメラが捉えた新宿と渋谷の映像を元にした絵。よく見ればこれは新宿の南口だとか渋谷のあそこだとか分かるのだが、とても奇妙なのは絵のなかに人影が全くないこと。完全に無人の街の風景。さらに不気味な感じがするのは新宿や渋谷の絵であるから「アコム」や「ヨドバシカメラ」、「109」といった文字のサインも絵のなかに描かれていて実際そう同定することはできるのだが、その描き方がとても不思議で文字を文字として描いているのではなく、あくまでもその文字の形態を絵のようにして追っているだけという感じで、絵と文字の中間のような非常に奇怪なイメージとなっていた。建物や道の形もまた作家の身体性や意思が感じられないような掴みどころのない一様な線によって描かれている。


 僕のコメントは以上です。作品数は多くもののバラエティ豊かな作品が並ぶ良い展覧会だったので、会期が短いことだけが残念でした。次回開かれるであろうあざみ野コンテンポラリー第二弾にも期待したいと思います。なお「イメージの手ざわり」展はすでに終わっていますが、2月26日には山村浩二さんセレクションによるアニメーション上映会も開かれますので、興味のある方は是非どうぞ。詳しくはこちらを
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